笑わなくても楽しいの
ベッドで眠っているとき微笑むことはあまりありませんし、朝になっても自分の経験をほとんど思い出すことができません。
眠りを楽しむ、という言い方は、ちょっと考えただけでは、まったくの逆説みたいです。
しかし、これを逆説だと思うのは、眠っているということと眠りとを同じものだと見なすからにすぎません。
ふつう眠りを楽しむと言うときは、たんに無意識でいるという以上の意味があります。
眠りとは、寝床に入り、快い布団の中にすべり込み、眼を閉じてくつろぎ、やがて眠りに引き込まれ、朝6時に目覚めてみるとまだ1時間たっぷり寝ていられると知ってうれしくなる、というような式次第の全体をいうのです。
眠りの悦楽とは、無意識でいることではなくて、寝床へいつ入ってもよいし、眠りに引き込まれてもよいし、夜中に目が覚めてもまた寝込んでよいのだ、ということをじゅうぶん味わうものなのです。